最終更新日 2022.05.27
庭で「果樹が生えている」個人邸Bで、普段の管理方法など、おもしろいお話を伺うことができました。なお、こちらのお宅への訪問は、22年4月30日です。
現状
放っておいても果樹はなる
お話を伺ったところ、「基本的に何もしなくても、果樹はなっている」「とは言っても年に1回はなんとなく肥料を与えているかな」とのこと。
本当ですか??
普段、プランター栽培を基本としている私としては信じられないご発言。でも実際、その程度のお世話でも、果樹はちゃんとなってるようです。あとで写真をみてください。
しかも「庭木のほとんどは、自分で植えたわけではない」という。
!?
「鳥がとんできて、そこ(フン)から果樹が生えたのでは」とのこと。
🐦!!
んなことあります?
これが本当ならすごいことです。
また「庭師さんに冬せん定してもらっているよ」とのこと。何もしていないと言いながら、大事なポイントで最低限のケアをされているのが分かりました。
何が生えたかわからない樹がある
鳥さんが運んできた樹木が多い庭なので、当然、商品ラベルがついてくるわけじゃなく。品種まで特定できなくても、樹種は、ほぼすぐ分かったので、お伝えしました。写真で見ていきましょう。
成長中の樹木
さくらんぼ
ホムセンで買ってこられた果樹。
支柱は、鳥除けの網をかけるために設置したのだそう。支柱を使わずに、網を樹木に被せればいいんじゃない?と提案すると、「鳥が網に顔を突っ込んで食べられたら、減るからイヤ」とw😊 鳥を果樹から遠ざけるように網を設置したいのだそうです。
たくさん成るんだし、端っこぐらいお裾分けしてもいいでしょうに・・
放任栽培なので、当然、枝もそのままで、上向きになってしまっています。これだけで収量は減っています。また、摘心していないので、脚立を立てないと、上部の実を収穫することが困難なほど、樹高が高くなってしまっています。
農家では、基本的に、できるだけ低い位置で収穫できるような工夫をされています。特に主幹を上に伸ばしすぎない、初期の枝を上でなく水平方向へ伸ばす。これは、収穫がラクなだけではなく、頂芽優性を断つことで、収量を上げることもできます。
「去年はもっと成ったし、もっと赤くて甘かった」とのこと。恐らく昨年、成らせすぎた反動で、今年は「裏年」になってしまったと思われます。つまり、株疲れです。
さくらんぼは、1か所からたくさん(最大9個)の実をつけるので、農家では3分の1まで間引きをして、ひと粒を充実させておられます。
わたし自身も、以前、桃農家へ半年間、手伝いに行きましたが、やってる作業の方向性は同じです。素人は、今年ひとつでも多く収穫できるのがベストだと思ってしまいますよね。
何をしようが自由なのは、家庭菜園の醍醐味ですが、結果に満足してないなら、農家の技術を知っておいても、悪くないでしょう。
土の状態は、かなりしっとりして、保水性が高い。また、落ち葉や落果などが積もって、腐食化が進んでおり、見るからに肥沃な感じがします。定期的な施肥をしていなくても、ある程度、果実がなるのは納得しました。
「果樹は放っておいても成る」というのは、結局、植物に良い環境や条件が、揃っているからに過ぎないようです。もし本当に放っておいてもいいのであれば、農家の方は苦労などしませんよね。
ここの主人がもうひとつ大事な点に気づいておられたのは”日当たり”のこと。特に朝日です。「ご近所で、朝日がしっかり当たっているおうちの植物は、活き活きと育っている」と。よく観察されていますね。
なお、このお庭は東から西に細長い造りになっていました。朝日は当たっていると思われますが、それでも同じ地区のお宅と比べれば、朝日がしっかり当たっている場所との違いは歴然としているようです。
わたしも東からの日差しを意識しています。そして、逆に西日は切らなければいけません。植物がよく育つための、日光の成分が異なるからです。
ブルーベリー(1)
かなり盛り盛り茂っていますが、写真中央がブルーベリーです。わたしが指摘するまで、この樹が何か、ご存じないままでした。
果樹1本あるだけで、次々にいろんな果樹が生えてくる可能性が広がってるなんて、庭植え果樹は、夢のようです。
「果実がたくさんなっていたけど、去年まで全部捨てていた」とのことw😊 もったいないな~
ブルーベリーは、異なる2品種を植えることで、収量がアップします。オリーブやアボカドなども同様です。
もし、本当に果実がしっかりなってるなら、この近所に別品種が植わってるってことよね?
さて、写真には、雪柳も写っています。雪柳は花後ですが、しっかり咲いているということは、つまり、ここが十分な日当たりがあることを指しています。
大量の花がついていました。7月下旬ぐらいに白々しく遊びに来てみようかしらw
土の状態。さくらんぼと同じく、しっとりして肥沃な感じです。
ちなみに、かつて、ご自宅を建築された際、この庭の土は、植物が元気に育つように、きちんと土壌改良をしてもらったそうです。そこから長い年月が流れた今、ほぼ自然に任せた状態でも、庭木がいきいきと成長しているのは、すごいことです。土づくりは本当に大事ですね。
あじさい
かなりの背丈です。写真でも分かりますが、株の先端だけを切っているから、そこから新芽がさらに伸びていくんですね。株をとにかく小さく仕立てたいのであれば、思い切って株元で切るようにします。
さらに、せん定のタイミングについて、後で話をしましょう。
花はなくとも、葉色や形がきれいですね。まわりの雑草がなければ、新緑の葉色が引き立つのですが。
あと、せん定個所を間違えたのか、枯れ枝が見えて、少し汚い仕上がりです。花ガラだけを切るより、新芽(花芽)のすぐ上で切る方がいいです。新芽は、今ついている花の下から数えて、2番目以降の葉の脇についているのが確認できます。
つつじ・さつき
つつじ、さつき(ツツジ科)、ブルーベリー(ツツジ科)が旺盛に育っていることから、ここは全体的に酸性土壌なんでしょうね。そう考えると、さきほどのアジサイの花色は青系ということになるでしょう。
グミ(仮)
背がかなり高く、葉っぱの感じはどこかで見たような気がしましたが、観察しても、しばらく樹種がわからないままでした。ある日、「あれはグミかも」と、ふと思いました。グミは、他の果樹人気におされて、最近はさらに見かけなくなった果樹です。
ここの主人は、この樹の花や果実を見たことがない、とのことでした。そもそも背が高いから、視線が上に行かずに、気づいていない可能性はあります。グミなら品種によっては秋に花がつくので、確認してみれば、樹種が判明するかもしれません。
それから、グミも、さきほどのブルーベリーのように、自家結実性がない植物なので、果実を見たことがないというのは、理にかなっているかと思います。
ブルーベリー(2)
そして、なんの樹種かわからなかった樹(グミ)の下に、もう1本ブルーベリーが生えてました。これで、ブルーベリーの果実がなっている謎が解けました。こちらの品種は、花が終わりかけてました。
いずれのブルーベリーも、品種は不明ですが、ただ、別品種であることは、ほぼ確実です。
そして、それぞれの距離は数メートル離れています。フンから芽吹いたのなら、同じ場所に近接して生えててもおかしくないものですが、いい距離感でフンしたものですねw
ブルーベリーの枝が触れ合うほど、隣どうしで設置・植え付けてしまうと、樹木同士が、互いのエチレンガスを察知して、成長を止めるそうです。庭に植えてしまった人はやり直しができないでしょうが、鉢植えの方で、あまりに密着して鉢を置いている方は、今すぐに離しましょう。
ヒイラギナンテン
こちら、ちょうど果実がなっていました。まだ青いです。
勘違いしてましたが、ヒイラギナンテンは、南天と同じメギ科。見た目はヒイラギに似ていますが、ヒイラギはモクセイ科。モクセイ科は、トネリコ・アオダモ・オリーブなどが分類されています。
このように植物の分類がなんとなくわかるだけでも、育つ環境が似ているので、栽培のヒントになり得ます。
今のお悩みやご要望
あじさいが切っても切っても生えてくる
“せん定あるある”ですね。
あじさい自体が樹勢の強い植物ですが、あらゆる植物は、中途半端な場所で切ると、そこから最長1年分伸びていくわけだし、切った箇所によっては、分枝して、枝が2倍に増えて、盛り盛りになってしまいます。枝先などをちょんちょん切って、切った気分にならないことです。
また、これもあらゆる植物においてですが、せん定時期で注意すべきは、花芽が作られる前に完了しておくことです。
アジサイの花期は7月中ごろまで。なので、せん定は花が咲いている時期に行って、切り花として楽しむか、花後の7月末までに完了。理由は、8月から花芽の準備が始まるからです。それ以降に剪定をすると、花芽を切り落とす失敗につながります。
ちなみに、8月以降も茎はぐんぐん伸びますので、花が咲いてほしい、理想の位置で切るのではなく、低めに切っておきましょう。
このおうちのあじさいは、さきほどの写真の感じだと、庭師でなく、主人がご自身で切られているかもしれないですね。せん定タイミングとせん定箇所は、ぜひ知っていただきたいポイントです。
レモンを植えたい
レモンと聞いて、気になることのひとつに、耐寒性があります。ホームセンターで買えば、その辺はクリアしているものが多いのかもしれませんが、時々、「レモン」としか書いてないラベルを見かけます。絶対に手を出すべきではないですよね。わたしからは、個人的におすすめの品種をお知らせしておきました。
レモンも放任して、どの程度、実をつけるのか気になりますので、ぜひ育てていただきたいです。ただ、庭に植えるスペースがないように思うので、つつじか、さつきと交代してもらうしかないかも。
植え付け場所で気にすべき条件としては、日当たりが一番長く確保できる場所がいいでしょう。
今後の管理ご提案
ご本人の希望に加えて、お知らせした方が、役立ちそうなポイントをお知らせします。
年1回の施肥
肥料や薬剤なしで、自然任せでも、ほぼなんとかなっているようですが、年に1回だけ、施肥されるとのことでした。なのであれば、特に果樹の体力をつけてもらうために、休眠明けにしっかり効かせるべき肥料について、年明けごろにお伝えします。
横枝の誘引
さくらんぼ(とレモン)は、横枝誘因が収量アップのカギです。さくらんぼの花芽形成は7~8月なので、今のうちに誘引してみましょう。