最終更新日 2022.08.02
大切な植物を病害虫から守る方法のひとつに、薬剤で予防することも考えられます。
22年3月に、モラタメnetで、アース製薬の「害虫退治オールスターズ(顆粒)」を取り寄せました。その使用感をリポートします。
被害は見られず 投与時期などには注意も
アース製薬の「土にまくだけ害虫退治オールスターズ(顆粒)」を、いくつかの植物に使ってみましたが、投与から1か月間に関しては、アブラムシなどの被害を感じたことは、ほぼありませんでした。
あとで、わたしなりの解説をもう少し詳しくしますが、商品裏書きによると、ポット苗などを植え付け時、植穴に数グラムだけ投入する指定が、ほとんどです。
植え付けから1か月程度は、まだ株がしっかり根付いておらず、また、苗が若い分、細胞も強固でないため、こういった薬剤で食害を回避する。そういった意味合いが商品設計にあるのかもしれません。
ちなみに、この商品は、防虫忌避剤ではなく、殺虫剤です。
害虫退治オールスター(顆粒)とは
ネオニコチノイド系の殺虫剤。主成分はジノテフラン。商品製造はアース製薬。
野菜・花・観葉植物など約300種の品種に使用可能とするのが売りのひとつ。裏書きから推測するに、ナス科・ウリ科・マメ科・アブラナ科などの人気野菜を育てる菜園家を主なターゲットとしているようです。
駆除対象となるのは、主に、アブラムシ類・コナジラミ類・ハモグリバエ類・ハムシ類・アザミウマ類(スリップス)。
投与時期や量は、「植え付け時」植穴に「1g程度」を「1回」投入するのが基本と考えていいと思います。
薬効は最大1か月、早くて数時間内から効く即効性も兼ね備えているようで、家庭菜園をされる人には、満足感の得られやすい農薬のひとつかもしれません。顆粒タイプなので、すぐ効かせるなら、投与後に、水を与えて、根から吸わせる必要があります。
薬のニオイが気になったことはありません。
ここまで、商品特徴として「明」の部分を紹介しました。一方、「暗」の部分も見えてきました。これに関しては、最後で触れます。
わたしの投与実績
植え穴投入と、生育期の2パターンで使用した実績をご紹介します。
植え穴投入
植え穴に投入するときは、できるだけ、株に対して十分、薬効が浸透するように、薬剤が根に触れるように散布します。
投与1か月以内で害虫の発生が見られなかったものに〇、何らかの理由で効果がうすかったものは△、効果が感じられなかったものに✕
〇ばら
〇ブルーベリー幼苗
〇オリーブ
〇ゼブラスイート(いちじく)
〇西洋かぼちゃ
〇角オクラ など
オクラの植え付けでは、試しにポット苗を、「オールスター」の上でコロコロと転がしてみました。少しの水分で土にひっついて取れにくくなりました。植穴投与より、さらに確実に効かせることができそうです。
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△カリブラコア、サフィニア、ペチュニア(ナス科)
ペチュニア類に使用しましたが、アブラムシ、コナジラミ、アオムシ、コナガの被害はみられず。ただし、ペチュニアで、ハモグリバエの被害が一部見られたため、土壌混和で再投入し、その後、被害は見られなくなりました。
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△ジャーマンカモミール
花後、株が弱ってきたところへ、アブラムシが発生。弱った植物に、害虫が寄ってたかるのは、一般的に知られるところです。自然の摂理で仕方ないと言っていいでしょう。かつ、薬効が切れる、1か月以上の日数が経った頃なので、薬剤に問題があるとは言いきれません。
土壌混和(アブラムシの写真あり)
すでに植え付けが完了している植物の株元や根元に、薬剤などを散布して、その周囲の土をかぶせて、なじませます。
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✕かんきつ(庭木。アオバハゴロモ発生後に施用)
土壌混和後も、一定期間をおいて、繰り返し発生しました。その理由を考えました。
1)アオバハゴロモは、そもそも適用外の害虫。ちなみに、アブラムシやコナジラミも、同じく吸汁害虫。
2)アオバハゴロモは、一度発生した箇所に何度も発生しやすい。
3)もし薬が効いたとしても、1回の薬効が1か月。しかも使用回数に制限があるため、何度も薬剤をまくわけにはいかない。
こうしたことから、実際の駆除方法は、ハエ・蚊殺虫スプレー(ピレスロイド系農薬)の吹き付けで対応。
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✕にら
数年、冬越ししている株。そこに毎年アブラムシが1株あたり数十~百匹発生。できるだけ指でつぶすも、地面へ逃がれるものもあり、完全に取り除いたつもりでも、数日すれば、またびっしり。アブラムシは1匹いれば、そこからどんどん増えます。
そこで「オールスター」を土壌混和しました。ところが、数日経っても、ほとんど効いている実感は無し。その理由を考えました。
1)そもそも、にらは適用対象外
2)見た目以上に株が弱っている
3)窒素などの栄養が多すぎる(ただし、液肥を適切倍率、適期に施用のため、過剰ではないはず)
4)もし薬が効いたとしても、1回の薬効が1か月。しかも使用回数に制限があるため、何度も薬剤をまくわけにはいかない。食材は特に乱用できない。
こうやって爆発的に増えたアブラムシを見ると、毎年うんざりしていました。
そこで、今まで聞いたことはありながら、実際に試したことがなかったのですが、石鹸水をたっぷりとスプレーでふきつけて様子をみることにしました。粘性のある水分で、虫の気門をふさいで窒息させる方法です。似た方法で、牛乳を使うやり方も知られています。
結果、翌日以降、ニラについたアブラムシの勢いが衰えていくのを確認。数日後には、完全に駆除できました。
わたしにとっては画期的なことです。農薬を使わずにアブラムシを退治する方法のひとつとして、今後は多用していきたいと思いました。
「オールスター」の課題・問題点
表向きの適用範囲は狭い
300種の植物に効く農薬として売り出している「オールスター」。
ただし、「300種」とうたっているにも関わらず、具体的な品種と、適切な使い方の説明が、人気品種に偏っており、かなり不十分です。
また、「害虫退治オールスター」とは、あらゆる害虫に対して効果があることを、暗に公言したようなネーミング。
ですが、裏書で保証しているのは、主に、アブラムシ類・コナジラミ類・ハモグリバエ類・ハムシ類・アザミウマ類(スリップス)程度にとどまり、それ以外は、保証されません。ただ、商品レビューを見ると、みなさん、菜園の不快害虫には手当たり次第使っているようで、しかも、それがたいてい効いているようで、実際、強力な農薬であることをうかがわせます。やはり「オールスター」としたのは、その辺を把握した上での命名かと思われます。
さらに、基本的な投与時期や量は、わたしが思うに、「植え付け時」植穴に「1g程度」かと思います。
一方、害虫「発生後」に使ってよいのは、トマト・なす・きゅうり・ピーマン・ねぎ・とうがらし・オクラ・さやえんどう・すいか・きくガーベラ・花き観葉植物・つつじ類 。しかも適用害虫は限られており、例えばトマトの場合、アブラムシとコナジラミのみ、とされています。いざというとき、この薬剤が適応するのかは微妙なところです。
↑農薬の説明としては、たったこれだけしか情報がありません。クリックすると拡大。
粒剤の長短
薬剤の形状が、細かい粒剤であることは、土に対して、薄く広く散布することができます。そして、製造から5年ほど有効と、比較的長く使えることも、固形物のメリットかもしれません。
一方、気になる点。
「パウチを1秒傾けると、約5g散布できる」とありますが、個人の感覚に任せた計測方法で、1秒5gを正確に散布できる人など、いないでしょう。しかも、ほとんどの植物に対して、1回1~2g、あるいは、6gまたは9g投与を推奨しておきながら、5g散布できることをうたっている意味がよくわかりません。
面倒ですが、一度は、量りを使って「1gがどの程度の量なのか」を見て確認しておいた方がいいでしょう。
また、実際に薬剤を与える際、パウチ袋から直接土に投入するより、スコップや受け皿の上にいったん少量出してみるのがいいと思います。特に野菜へ過剰に投与してしまっても、それを口にするのはご自身です。安全な状態で食卓へ並べるために、目の前の薬剤が、はたして適量かどうか、確認できる方法を取るようにしましょう。
ネオニコチノイド系農薬の功罪
強力な農薬のため、与えれば、素人でも、目に見えてすぐ効果を感じやすいネオニコチノイド系農薬。
一方、注意書きにもあるとおり、ミツバチへの悪影響が懸念されます。養蜂をしていないとしても、ナス科やウリ科は、ハチ類による受粉はかかせません。花の時期や、花の1か月前に使うことは、できるだけ避けた方がいいと個人的に考えます。そういう意味でも、この薬剤の投与時期は、植え付け時の土壌混和にとどめておくのがベターだと考えます。
これに絡んで、最近、テレビ「報道特集」でも物議を醸していたようですが、プランクトンの減少から、小動物の異常行動にまで多岐に影響し、生態系を崩すことで、ひいては第一次産業にまで影響を与えているらしい(養蜂家のハチが巣箱に帰ってこられなくなる、漁獲高が激減する等)それがネオニコチノイド系の農薬によるものではないかと疑われています。
たとえ家庭での使用程度とは言え、農薬の容量や使うタイミングは十分に守りましょう。いまや、二酸化炭素やマイクロプラスチックの問題への取り組みと同じ姿勢が求められるように思います。