最終更新日 2022.07.09
ヨーロッパのいちじく品種のひとつ「ビオレソリエス」の管理状況です。
ビオレソリエスとは
フランス原生。Violette de Solliès(ヴィオレ・ドゥ・ソリエス =”ソリエスの紫”)。クワ科。いちじくの品種のひとつで、秋にのみ実をつける秋果専用種。なお、「無花果」と書いて、いちじくと読むが、実際は、いちじくの「花の集合体」を果実として食している。
収量が少なく、希少であり、「幻の黒ダイヤ」とも呼ばれる。
日々の管理
植え替えを行ってしまえば、日々の水やりと、時々の追肥しかすることがありません。病害虫もつきにくい植物で、管理がラクな果樹と言えます。
扱い方は、他のいちじくに、ほぼ同じ。ただ、このビオレソリエスについては、栄養成長(樹高を大きくする)を優先する習性があるため、そもそも結実しにくい品種であることは承知の上で、栽培した方がいいでしょう。
植え替えと結実の関係
22年1月下旬に棒苗(1年生苗・自生苗=接ぎ木ではない苗)を取り寄せて、栽培をスタートさせました。
まず植え替えです。22年2月1日に行いました。葉も枝もついていない、幹だけの苗を「棒苗」と呼びます。この棒苗をスリット鉢に植え替えました。
植物の休眠期は、古い土を取り除いて、リフレッシュさせることができるため、根鉢を完全に崩して、根っこだけにします。これで春からの芽吹きに勢いがつきます。
スリット鉢10号(実質9号)で一度植えたのですが、数日後、急に気が変わって、根の成長を制限させるため、8号(実質7号)に再度植え替えました。
根をリフレッシュさせて、成長を促すなら、なぜわざわざ小さめの鉢に植え替えたでしょうか。
理由は、子孫を残そうとする生殖成長を促すために、樹形づくりを優先する栄養成長をストップさせるためです。特にビオレソリエスは、栄養成長が盛んで、実をつけようとしません。であれば、ビオレソリエスの鉢はできるだけ小さくして、成長をあきらめさせるべきです。
これは、いちじくに限らず、他の果樹を鉢植えで育てる場合にも同じ理論が当てはまります。逆に、果実の収穫よりも、樹形の成長を優先したい場合は、鉢をどんどん大きくしていきます。
なお、地植えで果樹を育てるなら、地中に、たとえば、コンクリートブロックやレンガなどで、区画を作って、果樹用につくった土をその中にいれて、植えつけます。
春のせん定と結実の関係
春の植え替えが終わったら、芽が動き出す前に、せん定もあわせて行います。なお、ミルクのような樹液に触れるとかぶれますので、手袋をつけた上で作業します。
ただ、植え替えたのは、棒苗でした。
枝も葉もついていないのに、せん定とは、いったいどういうことでしょう?
植物のせん定と言えば、樹形をきれいに保つため、人間で言えば、散髪のようなイメージを持たれるかもしれません。しかし、せん定には、植物を将来育てたい姿に仕立てるため、考え抜かれた切り方がいくつかあります。
「秋果専用いちじく」のビオレソリエスに対して行う、春のせん定は、
1)新枝を活発に出すよう樹に刺激を与える
2)新枝を出したい場所を管理者が指定することができる
というメリットがあります。
で、うちのビオレソリエスは、棒苗のどこを切ったか。
切りませんでした。。というより切り損ねました。
理由は、棒苗を切った後の木切れで、挿し木に挑戦しようとしていたのですが、どんどん後回しにするうちに、いつの間にか、芽が出て、葉っぱが出てきてしまいました。
頂芽優性で、長い棒苗の頂上付近にだけ、枝葉が出て、株元はさみしい樹形になるという状態になりました。ある程度、切らないと、こういう樹形になりますよ、という見本です。
切った方がより元気な枝が出たかもしれませんが、それでも新枝は出ました。うちの場合は、頂上に近い節から1つ目と2つ目に、それぞれ、1本ずつ枝が出ています。ビオレソリエスは、この頂芽優性の傾向が強いようです。
では、ビオレソリエスの枝を、横に誘引する仕立て(いわゆる、一文字仕立て)にすると、枝はたくさん出るか。
実は、これをやっても、新枝は枝先にしか出ないことが調べで分かりました。これは目から鱗です。つまり、1本の枝から出る新枝は数本に限られる品種であるということ。
このことから、ビオレソリエスの枝はタテに伸ばそうが、横に伸ばそうがどっちでもいいことになります。ただ、収穫のしやすさを考えれば、横へ誘引する方がいいですね。
いちじくの果実は、今春伸びた新枝から出た、葉っぱ1枚に対して、1個結実します。
収量を増やすため、新枝をたくさん出すにはどうするか。
多くのいちじくは、他の果樹と共通して、枝を横に誘引してやると、樹形を上に伸ばすことをあきらめて、実をつけようとする習性があります。横枝から新枝をたくさん出し、そこに実をつけるのです。結果的に、樹高をおさえることができるため、管理や収穫もしやすくなります。
ただ、ビオレソリエスの場合、春に出す新枝自体が少ないため、結実数はそれに準ずることになります。
そこで、なんとか枝数を増やせないかと、根っこを伸ばすよう促してみたり、肥料をひたすら与えてみたりすると、ビオレソリエスは、なかなか実をつけずに、樹ばかりが大きくなっていきます。
だからと言って、肥料をあげないわけにもいかないでしょうし、特異な品種と言えそうです。
なお、元々の枝数が少ないため、いちじくの他品種のように、新枝の芽かき・間引きせん定は、いたしません。
日当たり
1日6時間は、直射に当てるようにしています。
この直射日光は、できるだけ午前中の日光がいいです。午前中は光合成が活発な時間帯だからです。
水やり
春からこれまで、水は2日に1回程度としていましたが、猛暑日を迎えるようになってからは、翌朝には、葉が全体的にお辞儀するようになりました。考えられる理由として、
1)鉢が小さい(但し、土はバークたい肥で覆っており、鉢は葉に隠れて日陰ぎみ)
2)大きな葉っぱからの蒸散量が増えている
気温30度を優に超えたあたりから、水やりペースを、毎朝に切り替えました。
また、病害虫の心配は少ないため、雨に当たる場所に置いています。
病害虫
バラめがけてとんできたチュウレンジハバチが葉に止まっていたことは、何度もありましたが、今のところ、特に被害は見当たりません。
一方で、最恐の害虫テッポウムシ(カミキリムシ)の心配があります。
今後の管理
2022年は樹形ができあがっていないため、まだ結実しないと思われます。
最終的にどういう仕立てにするのがいいか、まだ漠然としていますが、根量が限られているため、2本仕立てにする。この方が収量は少なくても、株に負担が少なく、1つの実に水分と栄養が回りやすいことから、ベターかもしれません。
あるいは、その枝の根本付近から2節を残してカットして、4本の枝を伸ばす4本仕立てにする方法も。はたして、4本の枝が根量に見合っているのか不明であるのと、収穫がさらに1年遅くなるかと思います。
これらの間をとって、3本仕立てを試すのは、ありかもしれませんね。
いちじく苗木の販売店
苗木の専門店グリーンでGO!(楽天市場店・三重県)は、苗木を中心に販売されている総合園芸店。最近、果樹と言えば、こちらの店舗でしばしばお世話になっています。ちなみに「苗木部 by 花ひろばオンライン」も同じ運営会社。
これまで取り寄せた植物は、根っこも地上部も、到着時から現在に至るまで、状態はとてもよかったです。
最近注目の商品は、テッポウムシ(カミキリムシ)予防フィルム。ぶどうの他、オリーブ、いちじくなどの果樹やバラの幹を食い荒らす被害を軽減する園芸資材。幼木のような細い幹でも被害は出るようなので、対策は早ければ早いほどいいと言えそうです。