最終更新日 2023.06.30
畑に植える夏野菜苗を自作するために、時期的に遅すぎる3月下旬から、タネの芽出しをスタートさせました。
タネから育てられるか
野菜のタネって、ほとんど簡単に発芽します。
ただ、タネが求めている条件があわないと、難しいんです。
特に暖かい気温(地温)と適度な水分量。これが大事です。しかも野菜によって、それぞれズレがあります。そして、その中でも、発芽温度について、すべての野菜がまったく同じ条件ではないということも知っておく必要があります。
なぜ苗を作るのか(直まきしない理由)
土に直(じか)まきするタネと、苗を畑などに植える野菜が二種類あります。そもそも違いはなんでしょうか。
タネが発芽するには、水と酸素が必要です。水にどっぷりと浸かったままでは、呼吸ができません。なので、適度に湿りつつ、酸素もあるような状態が望ましいのは、ほとんどの品種に共通ではないかと思います。
一方、気温(地温)について、比較的低い温度帯でも発芽する野菜か、外気が高くならないと発芽しない野菜か(=栽培期間が後ろにずれ込む)、この点が、苗を作っておいた方がいい野菜の境界線と考えていいのではと思います。(豆類など、一部、野鳥のエサとして狙われやすいので、まず安全に苗を作ってから植えるというものもあり)
発芽適温を知る

発芽に適した温度=発芽適温を知るには、野菜のタネ袋の裏を見れば、およそ確認できます(中には、書いてくれてない不親切なタネ袋もあり。ただし、タネをまく適期だけは必ず書いてあります。〇月上旬~〇月下旬までといった具合。つまり、その時期の平均気温が発芽適温と推測できる)
先日アップした「タネえらび」の記事から、それぞれの発芽適温をチェックしてみます。
だいこん 15度~ 苗は売られていない※1
ゴボウ 20度~ 苗は売られていない
ニンジン 15度~ 苗は売られていない
トウモロコシ 25度~
枝豆 20度~
ふだん草 20度~ 苗は売られていない※2
スイスチャード 15度~ 苗は売られていない※2
ほうれん草 10度~ 苗は売られていない
シュンギク 10度~ 苗は売られていない
モロヘイヤ 25度~ 苗は売られていない
ねぎ 10度~
ミニトマト 20度~
ズッキーニ 25度~
白なす 25度~
落花生 20度~
といった具合。これだけの差があります。
同じタイミングで土に植えたところで、簡単に発芽しないのがよく分かります。しかも、これは、タネ袋に書かれた最低気温で、実際のところ、もっと高くないとしっかり発芽してくれないものがあります(トウモロコシ、なす、トマト、ここには無いけどカボチャなどは30度前後かそれ以上で発芽するとも)

これに関連した出来事として、22年の盛夏に、我が家の生ごみコンポストから、廃棄したかぼちゃのタネが、次々と発芽しはじめました。そしてカボチャの実が成熟してほしい時期には、秋を迎えてしまって、未熟果のまま、シーズンを終えてしまいました。自然条件の下で、タネから育てると、こういった残念な結果になりかねないのが分かります。
(※1)「苗は売られていない」と書いた野菜は、タネから育てるしかありません。なぜ売られていないか。初めの3つは、根菜だからです。苗が出荷されてから消費者に渡るまでに大移動が伴い、また、移植の際、素人からプロまでいろんな人が触ることになり、ここでもっとも根が動きます。また、販売中に根はどんどん成長していきます。時間が経てばたつほど、ポットから根が突き出したり、根が鉢の中で巻いてしまうことになります。これらは根菜にとって大きなダメージです。それでは正常に生育できず、クレームになるため、タネから育てるしかないのです。
根菜以外の「苗で売られていない」野菜は、トマトやなすなどのスター野菜などと比べると、地味で人気がないことが理由かと思われます。また、葉物野菜は収穫したら一発でなくなることも、苗が買われにくい理由のひとつで、だったらタネでいっぱい育てた方がいいですよ、という事情もあります。例外的に、レタスなどは人気があるので、売られています。レタス苗10個でワンセットみたいな売り方をされていることがあります(1苗単価が数十円という販売側の都合というのもある)。
(※2)ふだん草とスイスチャードは、同じ野菜を指していますが、発芽気温に5度の開きがあります。開発品種や販売会社によって表記の仕方が若干違うと思われます。
苗の生育期間
冒頭に「3月下旬からでは、夏野菜の苗づくりを始めるには、時期的に遅い」と記していました。タネから植え付けできる苗に成長させるまでどのぐらい期間がかかるでしょうか。
3月下旬たねまきの場合
トウモロコシ 育苗7日間~
枝豆 育苗14日間~
落花生 育苗14日間~
ミニトマト 育苗60日間~=>5月下~植付けがずれ込む
ズッキーニ 育苗50日間~=>5月中~植付けがずれ込む
白なす 育苗100日間~=>6月上~植付けがかなりずれ込む
白なすについて「3月末からの育苗では、夏の収穫は難しいかも」とタネメーカーのトキタが言われています(=盛夏は収穫がお休みとなり、秋なすの収穫のみになる)。上記はあくまでも育苗期間の話であって、それを土に植え付けてから、花が咲いて、収穫に至るまでに、まだかなりの日数が必要になります。
今回の苗づくりが遅かった理由は、最近まで(畑で)野菜をやるつもりが全くなかったため。これだけ、苗づくりに時間がかかるのであれば、もっと早めに準備しなければいけないことがわかります。適期のGWに植えたいのであれば、例えば、トマトなら、2月末ごろにはスタートするのがベターです。
一方、トウモロコシと枝豆のまめまき適期は4月上旬なので、3月末に苗づくりをはじめても、すぐ植え付けできるので、問題なさそうです。落花生のまめまき適期が5月上旬なので、苗を作るなら、4月中旬以降に苗をつくりはじめれば、苗のままで管理し続ける(あるいは植え付けてからの霜や寒さ対策をする)必要はないかと思います。
苗を買うメリット・デメリット
自然条件でタネをまいても、トマトやナスは、欲しいタイミングで収穫できないとなると、苗を買うしかなさそうなことが分かってきました。
植えたいときに(適期ではないけど春~適期のGWごろ)苗が手に入るのだから、発芽させる手間と時間を数百円で買えると思えば、ありがたいです。
しかも、店頭では、特にナス科やウリ科の野菜は、「接ぎ木(つぎき)苗」と言って、病気や暑さに強くて丈夫と”される”苗が売られています。ちなみに、例えば、地上部は、きゅうりのなる苗でも、地下部の根っこ側は、かぼちゃというパターンです。この苗は、商品ラベルに必ず「接ぎ木苗」とはっきり書いてあります。
ただ、ホムセンで売られている接ぎ木は、実際そこまで強くないのでは?という声を昔から、ちらほら聞きます。苗栽培を失敗させて、また買わせるためではという邪推をしています。。ドラッグストアで処方箋無しで買える市販薬と同じ販売理論です(薬が効いてるのかはっきりしない強さで平気で売っている)。私も以前は、畑ビギナーということもあって、接ぎ木苗をたくさんダメにしました。接ぎ木だからと言って、必ず栽培に成功するわけではありません。その辺もデメリットと言えるかもしれません。
その他にも、苗を買うデメリットとして、コスパが必ずしもいいとは言えません。接ぎ木苗は、実生苗(タネから成長させた苗)と比べて金額が数倍かかります。数量が欲しいとなると、尚更です。実生苗であっても、ひとつ100円程度であれば、結構な金額になってきます。ひとつの苗とタネ袋(数粒~数十粒)が同じ値段ぐらいのことが多いです。
また、育てたい苗、健康な苗が、店頭に必ずあるとは限りません。そもそも店頭にある苗の中でしか、品種を選ぶ楽しみがありません。
苗用のタネを買うメリット・デメリット
いきなりデメリットの話ですが、ご推察の通り、タネから苗を作るということは、時間も手間もかかるし、生育不良を起こさず苗まで持っていけるかはやってみないと分からない。さらに、経費が抑えられるかと聞かれれば、答えは「いいえ」。特に加温のための電気設備が必要です。電気代もかかって手痛いですね。。
ただ、多少の初期費用はかかりますが、耕作範囲が広い場合や、長い年月で見れば、それは大した額ではありません。何より、苗販売されていないタネを育てれば、周囲の人が作ってない品種の野菜を育て、味わうことができます。形や色の珍しい野菜を育てて、写真をSNSにアップすれば、映えますドヤですw。しかも、余ったタネは、ほとんどの場合、翌年以降も利用できます(タネの保管に関しては自己責任で)。
それと、発芽する時期をコントロールできるのも大きなメリットです。例えば、我が家で現在取り組んでいますが、トウモロコシの苗を第一陣、第二陣とずらして作っていけば、受粉タイミングのずれた株が、後作のトウモロコシの花穂で授粉する可能性も高まります。これらのおかげで、長く収穫ができることにもなります。この苗づくりを寒い時期から実行できるのは、直まき栽培にはできないメリットと言えます。
苗づくりに必要なもの
・たねまき培土(手元にあるものを使用)
・育苗ヒーター(3,297円、Amazon)
・苗床ケース(価格は上記に含まれる)
・トマトなどタネ3袋と送料(2,175円送料込み、トキタ種苗)
・表面温度計測器(手元にあるものを使用)

たねまき培土は、肥料分が含まれていない(あるいは極めて低濃度な肥料成分を含む)土のことを指します。発根したての根に肥料分が当たると根腐れを起こすようです。タネは発芽発根するエネルギーと養分をタネに蓄えているから、肥料があると、人間でいうところの食べすぎ胃もたれ状態になってしまうんでしょうね。この土はどこでも売られていて、大抵、軽いです。
私が買い求めた育苗ヒーターは、サーモスタットがないため、使い方を間違えると、なんと80度まで上昇していました。ヒーターが熱すぎるので、タネの間に布をしいて底上げしたのが逆効果でした。一歩間違えると火災を起こしかねないので、ヒーターの熱がこもるような使い方は避けてください。なお、このヒーターは、室温+10~20度で加温することが説明に書かれています。例えば、室温が20度なら、最大40度まで上昇する恐れがあります。植物の多くは、30度を超えたあたりから、生育を停止するものが多いので、危険な数値です。
温度計(地温計)や表面温度をレーザー測定する計器が必要です。できるだけまめに測った方がいいです。必要な温度を確保するために、一日中、温度計とにらめっこしていましたが、安定した地温が確保できることがわかってきてからは、朝(昼)晩の確認だけで済むようになりました。ヒーターの導入当初は、その上に、苗床をただ置いただけでは、適温にならない場合があることも知っておいてください。
苗づくりする野菜

現在、ヒーターの上に、苗床や湿らせたクッキングペーパーを使って、タネに加湿加温しています。
「マリーゴールド」サカタのタネ
手始めにマリーゴールドで試しましたが、いきなり失敗しました。ヒーターが熱すぎて、45度前後(推定)で、何時間もタネをさらしてしまいました。念のため、温度を下げて数日加温し続けてみましたが、2日経っても反応しないので、全滅させたと考えていいます。
マリーゴールドは、好光性種子といって、明るい環境の中で発芽しやすいため、土をかぶせない状態(我が家は湿らせたキッチンペーパーで挟んだだけの状態)でいいと思います。
新たに、ダイソーで新鮮なタネ袋を買ってきたので、再度挑戦します。
いきなり、わたしのいい加減な性格が出てしまいましたが、用意した苗床が適温で保たれているかどうかを予め確認してから、苗床にタネをのせて、加温しはじめましょう。ヒーターを過信すると、タネがもったいないです。
「虹いろ菜(カラフルふだん草)」トーホク社
マリーゴールドと同じ方式で加温中。7日ぐらいで発芽するのかな。タネの殻が堅いので、1粒だけ試しに砕いてから加湿加温しています。その他のタネは、硬い殻のままで様子見中。
ミニトマト「ジャングルミニトマト」トキタ種苗

湿らせたキッチンペーパーにタネを挟んで、ジッパー付ビニル袋にいれて、ヒーターで加温しました。新聞紙に似た紙質の包装紙を、袋の上に2枚重ねて、少しだけ暗くなるようにしていました。トマトは嫌光性ですが、紙が光を透過するので、かなり明るい方だと思います。
加温から1~2日で、4粒中、4粒から根が出ているように私には見えました。タネのサイズが1ミリ前後なので、根はとっても細く、目視が難しいです。ただ、思ったより、根が出るのが早くてびっくり(でも発根は勘違いだったりして・・)。4粒とも苗床に移し替えました。
注意点として、発根してから苗床に移し替えると、発根が確認できて安心ですが、移植の際、根を傷めてしまう恐れがあります。初めから苗床で加温してもいいかもしれません。
覆土(たねまき時にかぶせる土)の厚さめやすは1センチが標準ですが、我が家は5mmです。タネ袋の指定値の半分でいいと考えています。
トマトは、昼28度前後~夜22度前後と、地温が変化した方が発芽しやすいようです。育苗ヒーターが気温に連動してしまうことが、却ってよかったです。
白ナス「とろ~り旨なす」トキタ種苗

湿らせたキッチンペーパーで加温しました。
こちらは、たねまきから2日後に、4粒中、2粒から根が出ました。タネのサイズが2ミリ程度なので、トマトより、わかりやすかったです。残りも発根することを祈って、4粒とも苗床に移し替えました。
トマトと同じく、昼28度前後~夜22度前後と、地温が変化した方が発芽しやすいようです。日中はトレーに付属のふたをかぶせて加温、夜はふたを外して、さらに部屋の温度も下がっているので、地温も少し下がります。
ズッキーニ「ゼルダ・パワー」トキタ種苗

25~30度で発芽しやすいようです。苗床に直まきしました。
タネの向きについて、タネの方向がすべて同じ方向を向いていれば、タテ(先端を土に突き刺す)でもヨコ(土に寝かせる)でもどちらでもいいような気がします。とがった方から根っこが出てくるので、とにかくタネの先端が地中に出ないような、まき方します。今回はタテまきと、ヨコまきの2種類で比較できるようにしています。
地温の変化は必要ないかもですが、このトレーの空き区画に、トマトとなすをまいたので、夜は地温が下がる状態です。
「黒もちトウモロコシ」タネのノザキ

地温が30度超辺りで、恒温の方が発芽しやすいようです。トウモロコシは、暖かければ畑へ直まきでも簡単に発芽する野菜です。わざわざ人工的に加温する必要はありませんが、今回、苗床にまきました。朝晩、30度弱程度で、推移しています。トレーに付属のふたをかぶせたままで保温しています。それでも若干、地温が物足りませんが、これぐらいキープできていれば、たぶん大丈夫な気もします。ヒーターの熱が足りない場合は、ヒーター自体に直接触れない形で、ぐるりを囲うか、室温を上げていくしかありません。
1週間おきに12粒ずつ発芽させていく、ずらしまきを行う予定です。