最終更新日 2022.05.20
きうり栽培は、たとえ菜園ビギナーで、経験がなくても、手をかけてあげられるひとが向いている。特に毎日、しかも、午前中に時間的余裕がある人に向いている。そう思います。
もし上に当てはまらないなら、今すぐきっぱり、栽培をあきらめるべきです。
資材にお金かけたり、小手先のテクニックを覚えても、水やりする時間がそもそもないなら、やめておきましょう。
“🤠園芸超人”が、先日、誰もが夏野菜を植えたくなるGW直前に、きうり栽培のおすすめ動画を公開されました。わたしは、逆に、きうり栽培を「あきらめるべき」と題して、その理由に着目しながら、持論を展開してみます。
きうり栽培のハードル高すぎ問題

きうりは、家庭菜園で人気のやさいのひとつとされていますが、実際、育てやすさはどうなのでしょうか。
わたしの場合、何度も挑戦しましたが、すごく成功したと思えた記憶がほぼありません。
なぜ?
それは、放置して果実を収穫するには、ほど遠い野菜だから、だと思います。
「植物は、自然の力に任せれば、元気に育つ」というのは、基本的に、山野草に当てはまる考え方と思うんですよね。
私自身、これまで「野菜は草だ」と思う瞬間がこれまで何度もありましたが、きうりは別格です。常に目配り手配りしないと収穫できないんじゃないかと信じています。
いったい、何がそんなに収穫を難しくさせているんでしょうか。
安心な苗がない問題

もし、特定の品種を選ぶことで、諸問題を解決できるなら、ぜひ、失敗しにくい品種を選びたいですよね。
ただ、きうりは、失敗しにくく改良された品種が、実はあまり存在しないのではないかな。
それでも、「誰に何と言われようと、きうりを始めたい」のであれば、近所のホムセンで、「まっすぐ伸びるタイプ(節なり性)」の苗を買ってはどうかと私は思います。管理範囲が狭いので。
逆に「横に伸びるタイプ(飛び節なり性)」を選ぶと、つるだらけになって、実際の管理は大変に思う。横に伸ばして多収を狙うのは、まっすぐタイプのきうりに慣れてから、将来チャレンジ。
さらに、少し値段が高いけど、「接ぎ木苗」がいいと思う。病気には割と強いはず。わたしが過去一番よく育ったのは、接ぎ木タイプでした。ただ、絶対病気にならないわけじゃないです。接ぎ木を使いながら、病気を回避する方法も知りましょう。
他にもいっぱい植えたい問題

👉鉢えらび
きうりは、根が横に広がる野菜です。
プランター栽培の場合、根の形状から考えれば、ずばり、横に長く浅型の鉢がいいと思います。むしろ、どんな野菜でも、横長いタイプのプランターを使うのがいいかもしれないとさえ思うようになってきました。畑のイメージに少しでも近づけるためです。
ただ、私の場合、きうりを横長いプランターで育てたところ、21年の夏、確か1本ぐらいしか収穫出来なかった記憶が。。小さいのはちょこちょこなっても時間の経過とともにどれも消滅※
つまり、これは、失敗原因がひとつでなく、複数存在するため、ひとつクリアしたぐらいでは、まだまだ超えられない壁があることを示唆している結果でもあると思うんですね。
わたしが畑栽培をやっていた時、きうりの収穫本数だけで言えば、割とたくさん収穫できた年はあります。このことから、栽培スペースがあれば、成功の確率は高まる可能性があると言えます。
※(22.5.02追記)ほとんど結実しなかった原因について推測
1.接ぎ木苗でなく、価格が安い自根苗(じこんなえ)を使用
自根苗とは、種から発芽させた、純粋なきうりの苗です。植え付け時に根が損傷した恐れや、接ぎ木苗より草なぎが弱いことから、果実をつける元気がなかったかもしれません。
2.1番果と2番果を10cmに成長した時点で摘果していない
野菜栽培で、特に2番果の摘果はほとんど覚えがない。。NHK「やさいの時間」(22.5.01放送)からヒントをいただきました。
3.あらゆる摘心を行っていない
こちらは、この下にある「茎もデリケートだよ問題」で詳報します。
👉植物に必要な栽培スペース
広いスペースでの栽培がいいという話でしたが、そこに落とし穴が待っているのです。スペースがあると、どうしても、空いた場所に、他にも苗やタネをたくさん植えたくなる問題があります。これは初心者がどうしてもやってしまう失敗。
わたしもいまだにこの傾向が抜けないので、まだまだ初心者です。。植物が大きくなってくると、密植したことを、ほぼ後悔するんですけどね。
ちなみに、密植して逆にいい結果になる植物は、野菜なら「おくら」や「にら」など、樹勢が強いもの。根っこを張りづらくさせ、株を大きくなりすぎないようにすることが、日頃の管理や食べるサイズ的に、ちょうどいい。
話を戻して、密植を避けるため、一般的に、植物の生育に必要な”株間”(株と株とのすき間)を守ることが提唱されています。たとえば、タネ袋の裏書きを見ると、何センチおきに種をまくように、という指示が書いてあります。
きうりに関して言うと、藤田智先生曰く、株間50~60センチは確保するよう指示されています。幅広のプランターで栽培するなら、とにかく1苗にした方がいいんじゃないかと思います。近くの株に根負けするリスクを排除したいので。
空いたスペースの寂しさを克服できるのであれば、きうり栽培成功に一歩近づきます。
根っこがやたらデリケート問題
きうりは、とにかくナイーブです。
いかにして、根っこも茎も傷つけないかが、株を弱らせないことにつながります。
👉ポットから苗を取り出す方法
根鉢を崩さないように、たいてい、ポット苗を天地ひっくり返して、取り出します。これはきうりに限らず、多くの方が実践されてると思います。
👉植え付け時の落とし穴
上記と関連して、植え付け時にもうひとつ落とし穴があります。
きうりを、他のやさいと同じように、植え穴をあけないこと。このご指摘は、🤠園芸超人によるもの。これ聞いたとき、かなり納得しちゃいました。
平らな土壌に、根鉢をそっと置きます。そして、その周りに土を置いて、最終的には、根鉢の上辺と同レベルになるように、周りの土を水平にします。
この植え付け方を見ても、どんだけナイーブな野菜なんでしょう。。
私もこれが実践できれば、成功率がうんと上がるんじゃないかと思えてしまいました。このテクニックは、挿し木でもとられることがありますね。挿し木の切り口を雑菌にさらさないためです。
👉ポット苗の選び方(品種以外でいい苗を見分ける方法)
そもそもどんなポット苗がいいんでしょう。
藤田智先生の指導を見ていると、「苗の葉っぱが〇枚のものを選ぶことが大事」とよくおっしゃってます。
長らく、なんのことかな~と思ってましたが、これは、どうやら根っこの伸び具合と関係があるようです。つまり、根っこが長すぎると、根鉢の中で行き場を失った根がぐるぐると根がまわるようにはってしまい、土に植えても、放射状に伸びていくのが難しく、結果、苗が健全に育ちにくいようです。ちょっと難しいですか?
また、ポット苗から根っこが出てしまっているのもよくないと聞きますが、まさにこの理論のことなんでしょうね。
きうりは、本葉3~4枚が推奨されています。最初の双葉や接ぎ木の双葉まで数えちゃいけませんよ。
👉水やりはやさしく
ホースで水やりされる場合、シャワーやミスト状に切り替えできる散水ノズルをお使いの場合、間違えても「ストレート」かつ水圧強めで与えてはいけません。根っこが激しく損傷します。また、土がとんでもなく跳ね返って葉が「べと病」のリスクにさらされます。水やりは、ふんわりやさしい水流であげましょう。
茎もデリケートだよ問題
株元に近い葉から出てくる脇芽は5か所目までかき取って、株を疲れさせず、栄養を果実やその周りの葉へ送るという手法があります※
ただ、デリケートなきうりを「切る」行為そのものがリスキーに思えてなりません。雑菌の侵入で、枯れこみの原因になるからです。
せっかく、この脇芽とりをするなら、とにかく小さいうちに取ってしまう必要があります。脇芽が大きくなってしまってからでは、傷口が大きすぎるからです。成長の初期段階で十分管理する時間がとれることも、その先、成功するかどうかの分かれ目に思います。
上に伸びすぎて、株が疲れたり、収穫やつるの管理が大変にならないように、頂点を切ってしまう手法もあります。
ただ、わたしは、かつて、きうりの頂点を切った途端に、まさかの株全体に勢いがなくなったことが一度経験したのです。それで、これ以降、わたしはきうりを切るのが怖くなってしまいました。
考えられる原因として、はさみに雑菌がついていた恐れはあります。清潔なはさみを使うか、清潔な手でつまんで折り取るのもありかも。いずれも傷は最小限にすることに注意です。
脇芽や頂芽をかきとった傷口の乾燥を早めるために、晴天での作業が望ましいと思います。
※追記(22.5.02)株元から6か所目以降の子づる摘心
NHK「やさいの時間」(22.05.01放送)で紹介され、藤田先生のテキストにも載っている情報ですが、認識なし。。傷をつけることにもなる摘心作業は、できるだけ避けたい私ですが、株を長く元気に育てるためには、必要な作業のようです。
具体的に、株元から6か所目以降の脇芽が伸びた子づるに、葉が2枚ついたら、その2枚残して、つるの先を摘心。これも早めが肝心。
水やりをさぼる問題

きうり栽培で、いつも失敗する、ずぼらな私にとって、このポイントが一番大きいです。がんばってるつもりでも、思ったほど、正しい水やりができてない。
水やりができない理由は、
・畑が物理的に遠い
・日々忙しくて、ついおろそかになる
・自然の生命力を信じている
などいろいろあるでしょう。
きうりの水やりを忘れると、何が起こるでしょうか。
👉株が弱り、枯れる
組織成分の9割強を水分で占める野菜、故の、宿命ですね。
一度、水不足でダメージを受けた組織は復活しません。気づいたときに、急いで水やりしても、もう遅いわけです。植物全体に言えると思いますが、きうりは特にです。
👉果実がひん曲がって、皮が硬くなる
株そのものは問題なさそうに見えても、果実はうそをつきません。きうりが曲がってれば、水不足は明らか。
しかも、果実の水分を守るために、皮が硬くなりはじめます。トマト栽培で、甘くするためにあえて水分制限すると、反面、皮が硬くて困ったことがある方は、これが原因と思います。これこそ自然のたくましさ🍅
また、きうりをカットすると、中身が真っ白の場合があります。ここまで来ると重症。筋金入りの水分不足です。
👉おばけきうりがなりやすい
スーパーで見かける一般的なきうりのサイズが最もおいしいサイズです。
水やりがおろそかになりがちな方は、収穫適期も見逃しがちです。きうりの収穫が遅くなると、どんどん大きくなって、麺棒のように、長く巨大になって、”おばけきうり”の出来上がり。きうりは、その成長スピードが速いのも特徴です。大きくなるほど、皮にツヤもなく、見た目も悪くなります。
おばけきうりは、無理に食べても、タネが硬くなっているので、食べづらいです。
これらの現象は、ウリ科のズッキーニでも同じく起こりやすいですね。
👉きうりのならせすぎで株が弱る
しかも、オバケきうりができた時点で、きうり数本分か、それ以上を生み出したエネルギーが浪費されているので、その後の収穫本数が減り、株を疲れさせたことで、枯れる時期が一気に早まります。
きうりは、元々、株の寿命が短い野菜で知られています。このことから、たねまきの際、発芽時期をわざと少しずつずらして、収穫を長く楽しんでいらっしゃるベテラン菜園家の方もいらっしゃると思います。
とにかく水やりができない人には、残念な結果が何重にも用意されている野菜です。
ただ、ズボラ人の水やりにおいて、ひとつ光明が見いだせるのは、自動散水機が設置できるケース。水やりの手間をほぼ考えなくて済むので、きうり成功に大きく前進するのではないでしょうか。
ただ、収穫だけは、もちろん自動化できないので、果実をみつけたら、早めに採って次の結果に備えます。「まだ大きくなるんじゃ?」と欲張るとアウトです。
水を昼以降にあげている問題
せっかく水をあげているのに、株に元気がないことがあります。
👉正午から夕方に水やりする場合
水を与えたはずが、土中でお湯になって、根っこが痛みます。
また、ホースで水やりされる場合、ホース内にたまった水は温水なので、冷水が出るまで流し続ける必要があります。
👉夜間に水やりする場合
野菜が不味くなるといわれます。植物が盛んに活動を始めるのは朝で、夜は活動が低下しているようです。そんな時間帯に、栄養分を運んでくれる水を与えても、効果的とは言えませんね。人間の食事と同じ考え方ですね。
したがって、毎日の水やりは「午前中(できれば9~10時ごろまで)」が望ましいです。
病害虫にかかりやすい問題

👉病気について
「水やりや雨つぶが、葉に当たると、傷んだり、土の跳ね返りで病気にかかりやすい(べと病)」と、🤠園芸超人はご指摘されてます。
雨を避けるなら、トマトのようにビニールハウスを立てるか、日当たりと風通しのいい軒下で、育てるしかありません。
一方、雨除けをすると、畑栽培なら、その最大のメリットのひとつである、降雨による水やりが期待できなくなります。
ちなみに、かつて、畑栽培で上手にきうりを育ててた人の中に、ワラで小さな屋根や、すだれのようなものを作られていた方がいた記憶が。。ほどよく雨や風の恩恵も受けられ、軽く日よけ効果もあって、あのようなことをされていたのかもしれません。
👉害虫について
畑をされてる方は特に、ウリハムシに悩まされるのではと思います。周囲の区画の作物が呼び水になっているのかなと思います。防虫ネットを高く張り巡らすか、見つけ次第、捕殺。すばしっこく、飛んで逃げるので、実際に捕まえるのは大変です。
わたしの経験上、早朝は気温低下しているからか、日中より動きがかなり緩慢ですので、ウリハムシを探すならぜひ早朝に。一方、ベランダ菜園では、畑より発生しにくいかもしれませんね。
日本の気候亜熱帯化問題
🤠園芸超人によると、気温28度超えで、きうりは株の成長がとまるとのこと。
日本の猛暑は、すでに常態化しているように思うので、ここをクリアさせるなら、夏が本格化する前に、きうり栽培を終えてしまう方が賢明かもしれません。真夏に栽培しようとしても、難しいわけです。
きうりの耐暑性が低いというより、気温の異様なまでの上昇や不安定化の方が問題だと思うし、こればかりはどうしようもないですからね。
寒冷紗などで日ざしをやわらげる手もあるかもしれません。やりすぎると、光合成ができない恐れも。また、葉っぱの観察や手入れ、収穫をする度に寒冷紗などの覆いを外す必要が生じると、こういった作業が面倒になってしまいます。また、軽く日よけをしながら、風通しをよくする必要もあります。
土が干上がる問題
「焼け石に水」ということわざが、現実のものにならないよう、対策します。🤠園芸超人と私の大きな違いのひとつもここにあると思います。水やりのあと、根の周りからあまりにすぐ、水分が外へ逃げてしまう状態を回避させます。
👉プランター栽培の場合
園芸用土に赤玉土を加えて保水性を上げる。そして、土の表面をバークたい肥などでマルチングし、乾燥防止と土の跳ね返りを防ぐ。
マルチング資材として、バークたい肥は、安価で、おすすめです。わたしは、もっぱらこれがほとんどです。
👉畑栽培の場合
団粒構造の土作りと、ビニールのマルチ資材を使ったマルチングをする。
地温をあげすぎないことを考えれば、マルチングは黒がいいはずです。黒マルチの地温が、思ったほど上昇しないのは、NHKやさいの時間で先日検証されていました。また、シルバーより黒が安価でどこでも手に入りやすいことも、最適な資材と言えそうです。
シルバー素材による、日光の乱反射は、シルバーテープや、不要となったDVD等の記録ディスクを糸でぶらさげて、風になびかせる方がより手軽でしょう。わたしは、フルグラの袋の内側がアルミ素材なのを利用して、必要なだけ、はさみで切りとり、日光を乱反射させていたことがあります。スナック菓子の袋も使えそうです。
プランターでも畑でも、土作りでの保水性アップは、きうりに限らず、多くの植物に共通して大切と言えます。
肥料やりすぎ問題
初心者が陥りやすい失敗のひとつに、「肥料は濃い方、量が多い方が元気に育つはず」という誤解。
ただ、わたしの場合、適量と思ってたのに、きうりは、それでもまだ多かったという衝撃。これも🤠園芸超人と私との、大きな認識の違いのひとつだったようです。
わたしは、普段、庭木や果樹、バラなどの管理で、窒素のやりすぎは、株が弱るらしいことを知っているため、特に窒素の少ないものを意識して与えるようにしています。
一方、野菜に関しては、畑時代からの癖が抜けず、マメ科をのぞいて、今も888をちゅうちょなく使用しています。ところが、ウリ科に窒素が多い肥料を与えることは、失敗の元、とのこと。しかも888ではまだ多いというご指摘。。絶句です。
これまで、わたしが、ウリ科の栽培をやってきた中で、困りごとの第一位は、うどんこ病発症のあまりの多さです。今となっては、きうりも、カボチャも、スイカも、ズッキーニも積極的に育てたいと思えません。
ところが、窒素を控えめにすれば、うどん粉病被害を軽減できるとのこと。驚きと感激😲😊 これは、ちょっと見えて来る景色が変わるかも。
まとめ

ちょっとした知識があれば、栽培成功への希望が見え隠れするきうり栽培。
しかし、きうりを上手に育てるなら、正しい水やりを避けて通ることはできません。
もし、少しでも不安がある方は、きうりは、キッパリ諦めましょう。そして、きうりにかけるはずだった情熱を、他のやさいや植物に割り振ってあげましょう。絶対そっちの方が、時間的にも金銭的にも植物にも幸せだと思いますよ。
そして、きうり農家の方にリスペスト🥒🥒🥒
こんなナイーブ野菜を大量に生産することができるって、神!ありがたく、スーパーに並ぶきうりをいただきます。