最終更新日 2023.06.20
初めての挿し木に挑戦。それから3カ月、ようやく、鉢上げの日を迎えました。
挿し木
樹木の古い(硬質化した)枝を、いくつかの節が残った状態で切り出し、土に挿して、その節から根と葉を出させ、元になる木と同じ性質の樹木を増やす手法。
単純に同じ樹木を増やしたい場合に加え、元気のない樹木、老化した樹木の若返りなどに使える。ただし、匿名の個人も含めた違法販売、国産品の海外流出を阻止し、育成者の権利を保護するため、予め法律で守られた品種が指定されているもの(PVP)があるので、増殖・売買・譲渡時には注意が必要(=その行為には権利者の許諾が必要)。知り合い等への無償譲渡であっても、保護された品種はその行為が固く禁止されている。
なお、今回取り上げるいちじくの品種は、いずれもPVPに該当していません。
鉢上げのようす
作業日は大変暑い日で全国的に30度を超える箇所が多かった一日。早朝は葉が青々と元気だったものの、正午ごろ確認すると、土中の水分が完全に干上がっていて、無残な姿に。。(写真撮り忘れた)急いで水をたっぷりあげて数時間後に確認することに。
ダメージは残ったものの、なんとか回復。挿し木をした3カ月前の写真は次。
これ、どういう状態で管理していたのか説明しますと、まず、種まきで使う黒いセルトレイに、いちじくの春せん定(切り戻し)で不要になった枝を挿しました。挿し木のサイズは、10センチほどにそろえました。せん定で長い枝が出たものは、たくさん挿し木が確保できますし、短いものは、当然、枝数も少ない。
挿し木でもっとも重要とされているのは、保湿です。乾いてしまうと発根がストップしてしまいます。うちは、衣装ケースを簡易ハウスに見立てて、およそ3カ月間、この中で保湿しながら、発根を待ちました。
思い付きで衣装ケースを使ってみたものの、簡易温室としては、結構優秀で、保湿はもちろん、保温性もあり、ケース内は周囲より常に1~2度高かったです。また、ケースは透過性があるので、柔らかく遮光できました。また、屋外に出しても風の影響を受けません。軽いので移動もラク。天候や留守に応じて、屋内屋外、日当たりのいい場所、半日陰などへ自由にセッティングできたのはよかった。また、暑さで蒸れたり異常に温度が上がりすぎない環境下なら、基本的にフタを閉めているので、上に何か物を置くこともできます。
この3カ月間で、4月下旬に沖縄へ1週間まるまる出かけたのが、最長の留守でしたが、衣装ケースのおかげで、水切れもありませんでした。
鉢上げのタイミングとしては、セルトレイの下穴から、根が出てきたのが確認できた時です。
ロードス
23年2月に買ってきたばかりの1年生苗から挿し木ができるとは思ってませんでしたが、2本中、1本が成功。やはり、若木なので、まだ根張りが弱いのかも。あるいはこの品種特性で、細根しか出ないのかもしれません。楽天グリGOから取り寄せた1年生苗を植え替えた際も、根鉢を見て「これブルーベリー!?」と思ったぐらい細かったです。細根ですが、種まき用土をしっかり抱き込んでいます。
発根を待っている間に、どんどんと葉っぱが伸びてきて、こんなに大きくなるとは思ってもいませんでした。発根がある程度進んでから、葉っぱが展開するものと思い込んでました。株間を取らずに、すし詰め状態で挿し木したので、ここが失敗したことのひとつ。
葉がダメージを受けているのは、今回の鉢上げ日が猛烈に暑くて、水が干上がってしまったため。。次の葉っぱはまたそのうち出てくるので、あまり気にしなくても大丈夫。今はまだ葉の枚数が少ないので、傷んでいても、無傷の部分があることから、しばらく取り除かないでおきます。
ビオレソリエス
4本中、4本成功。楽天グリGOから送ってもらった、苗木の状態が元々とても太かったので、切り戻しせん定した枝も太かった。そのせいもあってか、根も太いものが多いです。細根もしっかり出てます。
ビオレソリエスは品種特性として、栄養成長が強いとされているので、根張りも強いかもしれません。
なんとなく一文字に仕立てたくなるような枝ぶりになりました。ビオレソリエスは、栄養成長が強すぎて、一文字にしても、特に大差ないということで、不向きとも聞いているのですが、これらで試してみてもいいかも。
ゼブラスイート
たねまき用土の抱き具合がいまいちな株がひとつあり、少しほぐれてしまいましたが、このまま鉢上げします。ちなみに、根鉢は今回は全く触らず。根の出方は、他の品種と比べても、まあまあ。
このゼブラスイートは、ホムセンのワゴンセールで売られていたもので、迎え入れた際は、完全にいじけた状態でした。白くてヌッとした枝が「枯れ果てた」感を演出していました。
さきほどの、白くて長~い枝を、株元近くまでばっさり切って、10センチ程度にバツバツと切り刻んで、挿し木として植えたら、ちゃんとこうやって、根も葉も出てくることがびっくりです。植物の生命力ってすごい。挿し木した時は、ダメ元だったんですけど。
鉢上げの資材
スリット鉢4号(カネヤ産業)
ホムセンでは、今回買い求めたカネヤのスリット鉢(4号=12センチ)が、どこへ行っても在庫があまりなく、ゼブラスイートの作業途中で、買い集めたものを使い切ってしまったので、今回は3つだけ。あと残り6つ苗があります。そもそもこんなに増やしてどうするの?って感じ。いちじくいっぱい採れて満足するのは間違いない。わたしには広い土地が必要です(;’∀’)
ちなみに、カネヤのスリット鉢はどこのホムセンでも売られているわけではなく、ビバホームなどで取扱いありました。大和プラスチックのスリット鉢は、私はあまりオススメしません。値段が安くてサイズも色も豊富なところは◎なんですが、スリットが狭すぎるので、サークルが阻止できず、通気性も悪く、機能性が低いと感じます。それと逆円すい型なので、風に煽られて倒伏しやすい形状です。
用土
全面的に草花用培養土でもいいかと思いますが、水はけと水持ちをさらに向上させるために、赤玉土を混ぜた方がいいかも。
うちは、赤玉土小粒(硬質ではない安いの)7割、バークたい肥3割で用土を作りました。
肥料
マグァンプKの1年肥効を使おうと思っていたのですが、どこに置いたか分からないので。。花友22と花友23でもらってきた住友化学園芸の「マイガーデン粒状肥料~植物と土の元気が続く」(10-18-7-0.6)を使用しました。4号ポットで4~6g推奨
うちは3g。全鉢これで統一するには少しケチるしか方法がなく。ハイポネックス社のマグァンプKの対抗品と位置付けられているのかも。価格で魅力的な方を買ってもいいかな。
このほかに、カキガラ石灰20g前後。腐植酸ひとつまみ2g前後も混ぜました。
石灰はそこまで気にしなくてもいいかもですが、ヨーロッパ地中海沿岸原生の品種が多いので、一応入れてます。
腐植酸は、リン酸の固定化(=リン酸が効きにくくなる)をやわらげたり、発根を促進したりする機能があります。腐植酸は少量で、たい肥を大量に投入する代替手段になり得るとされていますね。これで運搬と作業の手間、経費の大幅削減になります。
ところで、前述の粒状肥料の成分10-18-7のように、リン酸成分が突出しているのは、土中でリン酸が効きにくくなるのを、予め多めに投入することで克服する意図があるそうです。ということは、腐植酸を入れることで、18に近い値が期待できるということになります。
鉢上げ結果
鉢上げ作業した感想としては、あまり喜んで挿し木しまくると後が大変だなという。。w
思った以上に、成功率が高かったので、せっかく育った苗を捨てるのが忍びなくって、結局、全部育ててあげることにします。次回のせん定時は、絶対挿し木しませんw こちらも畑野菜同様、欲しい方が近所にいたら、差し上げる予定です。
今後の管理
日よけ
確か、4月中頃まではずっと部屋の中で管理していて、衣装ケースごと、外に出してみたら、一気に葉っぱが溶けてなくなってしまいました。遮光気味とは言え、急な環境変化には非常に弱いことを目の当たりにした出来事でした。
これからは衣装ケースの庇護?はありませんので、急な直射日光、しかもこの暑さは、非常に危険なはずです。むしろ枯れてくれても、ちょっと嬉しかったりするかもしれませんが。。w まずは日陰からスタートして、半日陰、そして直射と、段階を踏む必要があります。
風よけ
根鉢がとても小さいので、植え付けたと言っても、風で簡単に曲がってしまいます。支柱を立てればよかったのかなとも思いますが、鉢も小さいのであまり意味がないような気も。強風にさらされる環境はそもそもいちじくは嫌いなようですし、根がしっかり張る数か月後までは、風よけ対策がしばらく必須です。
水やり
鉢がとても小さいのに、これから猛暑へ突入していく、過酷な季節がやってきます。毎日の水やりもかかせませんが、鉢に直射が当たらないような工夫も必要です。葉が重ならない程度に鉢を密集させ、外周の鉢には、板を立てかけておくだけでも有効。
追肥
水やり計画にもとづく液肥の追肥で、栄養を補います。固形の追肥も計画に従います。
関連リンク
・いちじくの挿し木(2023年3月31日記事)
公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会が運営する、どの植物品種が誰によって品種登録されているかを調べることができます。
・[農家の特報班]その苗、違法かも… フリマアプリに登録品種のサツマイモ / 日本農業新聞 (agrinews.co.jp)
2023年6月14日付の記事で、ちょうどPVP関連のニュースが出ていたので、ご紹介。フリマアプリで出品されているような植物は、基本的に違法と考えていいと思います。そこで若干安い品を買ったところで、がんばってる農家さんたちを、自らダメにしていることに加担していることに、気づいた方がいいでしょう。自分がちょっとぐらいいいだろう、の積み重ねが日本の農業や食を危うくしているのでは?
フリマ運営側も、AIでの自動探知や善意の通報に頼るだけでなく、出品登録時の審査をそもそも厳正にして、素人や闇業者による植物・タネの出品を阻止してほしいと思います。